気管切開には様々な合併症があります。今回は気管切開に関する合併症の種類と予防について説明します。
気管切開の合併症
気管切開による合併症は術中、早期、晩期に分けて以下の合併症があります。
その中で長期管理する上で関わってくる合併症について説明します。
術中 | 早期 | 晩期 |
出血 | 出血 |
出血 |
気胸 | 気管切開部位の感染 |
声帯機能不全 |
気縦郭 | 肺炎 | 嚥下障害 |
皮下気腫 | 縦隔炎 | 喉頭浮腫 |
無気肺 | 敗血症 | 声門下狭窄 |
気管後壁の損傷 | 気管切開チューブの挿入困難 | 気管軟化症 |
輪状軟骨・気管軟骨の骨折 | 気管切開チューブの誤挿入 | 気管食道瘻 |
ガイドワイヤの誤挿入や消失 | 気管切開チューブの閉塞 | 肉芽形成 |
気管外への誤挿入 | 回路接続外れ | 創傷治癒遅延 |
挿管チューブの抜去 | 事故抜去 | 瘻痕形成 |
気管切開チューブの挿入不可 | 気管腕頭動脈瘻 | |
換気不能、低酸素血症 | 回路接続外れ | |
誤嚥 | 事故(自己)抜去 | |
心肺状態の悪化 |
『人工呼吸』第26巻2号 総設 気管切開の適応と方法 参照
出血
術中操作、術後の早期で気管粘膜の炎症性病変、潰瘍・肉芽からの出血が多いです。また、早期、晩期で気管内吸引、カフ上部吸引の刺激や吸引カテーテルによる損傷が誘因となる出血があるため、出血が発生した際はどこが原因なのかを主治医を確認し、治療する必要があります。
気道閉塞
血液や痰といった分泌物により気管切開チューブ内腔が閉塞し、換気ができなくなります。また、患者の体動や体位変換、人工呼吸器回路の重みにより気管切開チューブの位置がずれて、肉芽が気管壁に接触することにより閉塞または抜去することがあります。閉塞し換気ができなかった場合は、患者のバイタルサインを確認すると同時に応援を呼びます。医師が到着するまでの間、気管吸引をおこない、閉塞が解除できるか確認します。吸引カテーテルが入らないようであれば、気管切開チューブは完全に閉塞している可能性が高いです。その場合は、気管切開チューブを抜去し、新しい気管切開チューブに入れ替えます。医師の到着時に処置ができるように新しい気管切開チューブの入れ替えや救急カートの準備をしておきます。
事故(自己)抜去
患者の体動や体位変換、人工呼吸器の重みにより気管切開チューブが抜けてしまう可能性があります。閉塞時と同様にバイタルサインを確認すると同時に、応援を呼びます。医師が到着するまでの間に、気道を確保します。気道を確保し、ジャクソンリースやバックバルブマスクで換気を行いますが、患者の気管切開がどのような方法で行われているかのよって換気方法が異なります。喉頭分離なしの患者は、気管切開孔を清潔なガーゼで押さえ、経口・経鼻でマスク換気します。喉頭分離あり(永久気管孔)の患者は、気管切開孔にジャクソンリースまたはバックバルブを当ててO2投与します。そのため対応する患者は喉頭分離なし、ありを確認する必要があります。特に気管切開術2週間は、気管壁と皮膚の間の組織に確実な通路ができていないため、事故抜去による閉塞から窒息する危険性があります。無理に再挿入すると、気管切開チューブが皮下に迷走し換気困難または出血する危険性があります。そのため十分に注意して対応する必要があります。
まとめ
今回は、気管切開の合併について説明しました。気管切開は長期管理するため合併症は様々ありますが、日頃から注意することで回避することができます。また、対処を日頃から練習することで、いざ起きた際は慌てずに対処することができると思います。
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セミナー風景
主な内容は下記の通りです。
気管切開患者ケアプログラム
・人工気道と気管切開
・留置と固定
・カフ管理
・発声
・吸引
・加湿、その他
・PMDA、ヒヤリハット報告