はじめに
ICUやクリティカル領域などでよく使用される人工呼吸器のモードの中に、SIMV(synchronized intermittent mandatory ventilation)モードがあります。このモードは、患者の自発呼吸の有無を感知して、自発呼吸が無いときには調節換気(強制換気)を、自発呼吸を感知した際には補助換気を行うような換気モードです。
手術中など、麻酔により完全に自発呼吸がなくなるような状況ではVCV、PCVのような強制換気モードで管理されることが多いですが、ICUやクリティカル領域などでは術後の麻酔から覚醒させ抜管を目指すフェーズなので、麻酔から覚めていくにつれ徐々に自発呼吸が認められるようになります。
このようなフェーズに、手術中と同様VCVやPCVのような強制換気モードで呼吸管理をしていた場合、ファイティング(=人工呼吸器側の送気と患者側の呼気がぶつかってしまい、換気ができなくなること)が起こってしまうことも考えられます。そうならないために昨今ではSIMVモードを活用し、人工呼吸器管理をされる施設が多くなっています。今回のコラムではSIMVモードの特徴について説明させて頂きます。
SIMVとは、どういう換気モード?
SIMVの機能
SIMVは患者の自発呼吸を感知する時間幅を設定します。この時間幅のことを「トリガウィンドウ」と呼びます。これを設定することでトリガウィンドウ内に出現した自発呼吸のみに補助換気を行い、トリガウィンドウ外の自発呼吸には補助換気は行わないという換気システムです。一般的に人工呼吸器のPSVと併用されることが多く、PSVを設定した場合には、トリガウィンドウ外の自発呼吸にはPSVが作動します。
また、SIMVは従量式換気(VC;Volume Control)と従圧式換気(PC;Pressure Control)を選択できます。
グラフィック表示
【SIMV:自発呼吸なし】
✓呼吸回数12回/分に設定しているので、5秒に1回、調節換気が行われます。
【SIMV:トリガウィンドウ内に自発呼吸あり】
✓前の呼吸から5秒後に入る予定であった調節換気を前倒しして、自発呼吸に同調させ補助換気を行います。
【SIMV:トリガウィンドウ外に自発呼吸あり】
✓人工呼吸器による補助換気は行われず、呼吸回路内の空気を吸っただけの波形となります。
ただしPSVを併用する場合は、補助機能として設定した分のPS圧(ピンク色の部分)が働きます。
SIMVの特徴
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✓自発呼吸に対して同期して換気するので、ファイティングを予防することができます。
✓トリガウィンドウを設定し、トリガウィンドウの内外で換気サポート様式が異なります。
✓設定呼吸回数を徐々に減らすことにより、ウィニングを行うことができます。
まとめ
近年医療現場で用いられる麻酔器・人工呼吸器の設定は非常に多様化しており、様々な換気モードが存在しています。その中でも今回ご紹介させて頂いたSIMVモードは、ICUやクリティカル領域などでは広くご使用されている換気モードのひとつです。また最近では麻酔器に付属している人工呼吸器にも、SIMVモードが搭載されているものが数多く登場してきておりますので、今後の麻酔器・人工呼吸器の更なる進化に注目していきましょう!次回のコラムもお楽しみに!