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PEEPとは?
PEEP(Positive End Expiratory Pressure)とは呼気終末陽圧と呼ばれ、呼気終了時に気道内圧が0㎝H₂Oにならないよう(=肺胞が完全に虚脱しないよう)、肺胞内に一定の陽圧をかける補助機能です。主に無気肺予防を目的として使用されますが、常に一定の圧を継続的にかけることで、生体肺へのデメリットも少なからず生じます。
今回は前回に引き続き、PEEPのデメリットをご紹介させて頂きます。
PEEPのデメリット
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デメリット1:肺の損傷
胸腔内圧上昇により、肺実質に圧力がかかり、肺の圧損傷や気胸を引き起こす危険性があります。
最近では人工呼吸器関連による圧損傷を総称して、VALI(=Ventilator Associated Lung Injury)と呼ばれています。
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デメリット2:【右心系】前負荷の減少
高すぎるPEEP設定により、胸腔内圧が上昇します。これにより心臓に戻る静脈還流が減少して、右室の血液量が減少するので、血圧低下につながります。
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デメリット3:【右心系】後負荷の増大
PEEPにより肺胞内圧が上昇することで、肺血管抵抗が増大します。そのため、右室後負荷が高くなり、左室への血液流入が阻害されます。その結果、心拍出量低下(=LOS)につながります。
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デメリット4:【左心系】後負荷の減少
機械的陽圧換気により、胸腔内圧が上昇し、圧格差の効果から全身への血液が駆出されやすい環境となります。しかし後負荷が低下することは、血圧が低下することを意味するので、重要臓器および抹消組織への血流が低下します。
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デメリット5:尿量低下・肝機能低下
心拍出量低下による腎臓や肝臓への血流量が低下することで、尿量低下・肝機能低下につながります。
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デメリット6:頭蓋内圧上昇
胸腔内圧上昇に伴う、静脈還流低下により頭蓋内の血液量が増加することで、頭蓋内圧が上昇します。その結果、意識レベルを低下する原因になりかねます。
他臓器への影響大!
ここまで、PEEPのデメリットをご紹介しました。
膨らませすぎて破裂してしまう風船のように、肺実質にかかる圧で肺が損傷してしまう以外にも、肺以外の臓器にも悪影響を及ぼしてしまうことを説明させて頂きました。もちろん患者背景を考慮した上で、適切なPEEPをかけることは人体に良い影響を与えますが、必要量以上のPEEPをかけることでのデメリットも考慮しておかなければならないですね。(お役立ち情報『PEEPの有用性とリスク ~PEEPのメリット~』参照)
また肺自体が、心臓という全身循環の中核ともいえる臓器と隣接している臓器なので、肺で起こったイベントが心臓血管系へ影響を及ぼしやすくなっているとも言えます。臨床現場では呼吸管理と循環管理は1セットとして考えていかなければならない状況は多々あるかと思いますが、その理由は上記のことが大きく関わっていると言えるでしょう。
まとめ
前回の記事と併せて、PEEPについてご説明致しましたが、PEEPにはメリットとデメリットの両側面を持ち合わせた機能であることがお分かりいただけましたでしょうか?
昨今の重症呼吸器疾患でも活躍の機会が多く見受けられるようになった人工呼吸器ですが、PEEPなどの有用な機能をぜひご活用して頂き、一人でも多くの患者様の予後が改善されることを願うばかりです。