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PEEPとは?
PEEP(Positive End Expiratory Pressure)とは呼気終末陽圧と呼ばれ、呼気終了時に気道内圧が0㎝H₂Oにならないよう(=肺胞が完全に虚脱しないよう)、肺胞内に一定の陽圧をかける補助機能です。主に無気肺予防を目的として使用されます。
通常3~5㎝H₂O程度のPEEPを設定することが多く、目的や患者状態などによりあえてPEEPを高く設定したり、低く設定したりすることもあります。
今回はPEEPの実際の効果、それに伴うメリットをご紹介させて頂きます。
PEEPのメリット
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メリット1:酸素化向上
常に肺胞に一定の圧をかけるため、肺胞虚脱を防ぐことが出来ます。肺胞を常に膨らませておくことで、血液への酸素の取り込み(=拡散能)も向上するため、効率よく酸素の取り込みが可能となります。
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メリット2:肺損傷の予防
虚脱した肺胞を膨張させたり虚脱させたりすると、肺胞同士で摩擦が生じやすくなり、肺損傷(=VALI)を引き起こしやすくなります。そのため、あらかじめ肺胞に陽圧をかけることで肺損傷の予防ができます。
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メリット3:呼吸仕事量の省エネ
常に一定の圧がかかっているので、最高気道内圧(以下Pmax)までの駆動圧が少なくて済む(=呼吸仕事量が少なくて済む)ことです。
例えばPEEPが5㎝H₂Oかかっている患者さんがいて、その患者さんのPmaxが10㎝H₂Oだったとします。PEEPがかかっていない、すなわちPEEP0㎝H₂Oの状態だとPmaxまで必要な圧は10㎝H₂Oですが、この患者さんのようにPEEPがかかっていれば、Pmaxまで必要な圧は5㎝H₂Oとなりますよね?そのため患者さん自身の呼吸仕事量が少なくて済むということです。
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メリット4:各呼吸器モードとの併用可能
人工呼吸器の各モード(ex.PCV、SIMV、PSV…)との併用が可能な点です。
モードの呼吸様式で換気をしつつ、PEEPも同時にかけることができるので、肺胞に決められた圧を規則的にかけることができる点です。
患者ごとの最適なPEEPとは?
前述の通りPEEPのメリットをご説明させて頂きましたが、PEEPという機能は結局どのくらいの設定が最も患者にとってよいのかという回答は、とても難しい質問です。
なぜなら、例えばARDSのような重症呼吸器疾患ではPEEPを高く設定して、呼吸仕事量をなるべく低くして、一回換気量も少なく設定するなど、疾患にフォーカスした肺保護戦略としての大まかな指針は示されているものの、患者さんの全身状態はもちろん、体格や性別、年齢によっても最適設定が大きく異なってくるためです。
また、肺気腫・慢性気管支炎のようなCOPD重症例では、潜在的にauto PEEP(内因性PEEPとも呼ぶ)が存在する状態なので、人工呼吸器のPEEP設定は低めに設定するなどして対応します。
人工呼吸器を多く使用しているICUでも、上記要因を考慮した上で診療中に肺リクルートメントを実施し、コンプライアンスを測定して、それぞれの患者に最適なPEEPやPS、呼吸器モード設定を模索していくというのが実臨床で実践されている方法です。
次回のコラムではPEEPのデメリットについてお話させて頂きますので、お楽しみに!