緒言
「印西市立印旛医科器械歴史資料館(以下、医科器械資料館)」は、古くは江戸時代に使用されていた外科器具(レプリカ)から大正時代に実際に使用されていた顕微鏡や膀胱鏡、戦後に開発された国産の麻酔器、人工腎臓、人工心肺装置など、外科だけではなく、歯科、眼科、耳鼻咽喉科、形成外科、皮膚科、産婦人科、放射線科などさまざまな診療科で使用されていた医療機器、治療機器、診断機器の実物を1000点以上見ることができる世界的にも珍しい医療機器専門博物館です。
歴史
医科器械資料館の始まりは泉工医科工業の創業者である故・青木利三郎氏が、第50回日本医科器械学会大会(現・日本医療機器学会)の大会長を務めた1975年まで遡ります。病院で古くなって使用されなくなった医療機器は、歴史的遺物として重要な価値があると認識していた青木は、史料として保管するため病院から情報があれば個人的に赴き収集していました。
青木は第50回日本医科器械学会大会を開催する際、記念事業として「医科器械の歴史展」を企画し、さらに精力的に自ら全国の病院や大学を回り、歴史的な医療機器を集めて展示会に出展しました。大変評判が良かった「医科器械の歴史展」開催後、収集した資料を一般公開するために、当時は泉工医科工業の敷地内に「青木記念医科器械資料館」を開設いたしました。その後、印旛村がこの資料館を誘致し、当時の消防署を改築し2007年4月現在地に印旛村医科器械歴史資料館として開館しました。2010年3月市町村合併により現在の「印西市立印旛医科器械歴史資料館」に改名し現在に至っています。
*現在は一般財団法人日本医科器械資料保存協会により管理運営されています。
展示物
医科器械資料館は2階建ての建物となっており、1階に3部屋、2階に7部屋、合計10部屋の展示スペースに以下のようにカテゴライズされた医科器械がそれぞれ展示されています。
- 1.心臓関連
- 2.手術台・消毒器・無影灯等
- 3.患者監視装置・臓器保存装置・レントゲン 他
- 4.顕微鏡、眼科器械、ミクロトーム、天秤 他
- 5.保育器
- 6.電気メス
- 7.心電計、脳波計等
- 8.麻酔器、肺機能検査器、酸素テント 他
- 9.透析装置、内視鏡、内科、外科各種手術器具、麻酔関連他
- 10.低周波治療器 他
展示品の中でも特に人工心肺関連は充実しており、リリハイ式人工肺や日本で初めて心臓手術が行われた頃に使用されていたディスク型(回転円盤型)人工肺、メタルフィンガー式人工心肺装置を見ることができます。
さらに、人工心肺装置は昭和40年から50年代に使用されていたであろう、海外製の低速回転式人工心肺装置(ペムコ社製)だけでなく、国産の人工心肺装置である東京女子医大式、名古屋大学式、自動記録装置内蔵人工心肺装置、6シリンダー型拍動ポンプなど多数の装置を観ることができます。
人工心肺装置:https://www.mera.co.jp/medical/product-info/498/
人工肺:https://www.mera.co.jp/medical/product-info/503/
また心臓関連としては、1950年代60年代の心臓ペースメーカーや人工血管、人工心臓弁(器械弁、生体弁)だけでなく人工心臓まで展示されています。
心臓ペースメーカーに関しては開発当初の大きさと現在の大きさを比較すれば、医療機器の進歩を実感できることと思います。
機械式人工心臓弁:https://www.mera.co.jp/medical/product-info/545/
その他にも、大理石で出来た手術台や戦時中に使用されていた移動式の高気圧酸素治療器なども展示されており、その時代背景とともに歴史の変遷を垣間見ることができます。循環器関連の医療従事者の方々だけでなく、手術、麻酔関連や歯科、眼科、耳鼻咽喉科、形成外科、皮膚科、産婦人科、放射線科など多岐にわたる診療科領域の皆様にも大変参考になることでしょう。
来場者
来場者は、医師、看護師、臨床工学技士など医療従事者だけでなく、医療メーカー、医療代理店の方々など様々です。また、臨床工学技士養成校や看護学校などの学生さんの研修として見学されるケースもあります。もちろん、医療とは全く関係のない近隣市民の方々がお散歩ついでに見学されることもあります。
アクセス
「印西市立印旛医科器械歴史資料館(以下、医科器械歴史資料館)」は、京成成田スカイアクセス線「京成上野駅」から約50分の「印旛日本医大駅」から歩いて4分の位置にあります。
- ※敷地内には来客者用駐車場もあります。
開館日時
開館日:月曜・水曜・金曜日(祝・祭日・12月28日~1月4日の年末年始は休館)
開館時間:10:00~16:00
- ※毎月第一月曜日には説明員が駐在し、展示物の説明をしていただけます。
入場料
無料
さいごに
過去において医科器械資料館に来場された医療従事者の皆様からは、以下のように様々な思い出とご感想をいただいています。
「懐かしい。新人の頃、この装置を使用していました。」
「昔はこの装置、こんなに大きかったんだね。」
「この器具は使いづらかったけど、よく考えられていたんだよね。」
「基本的な構造は今も変わっていないね。」
「技術が発達していない当時、よくこんな装置を開発できたよね。」
皆様もお気軽に「印西市立印旛医科器械歴史資料館」を訪問し、医療機器の歴史に触れるとともに、医療分野の進化を確認されてみてはいかがでしょうか。
【「印西市立印旛医科器械歴史資料館」公式ホームページ】