呼吸不全とは
大気(空気中)から酸素を体に取り入れて、体内でできた炭酸ガスを体外に放出するという肺の本来の働きを果たせなくなった状態です。
通常ですと、動脈血中には100mg程度の酸素が含まれており、そのほとんどが赤血球中のヘモグロビンと結合し、体の各組織に運ばれます。血液中の酸素が減少することを「低酸素血症」と呼びます。また、体の組織でできた二酸化炭素を充分に体外に放出できないと「高二酸化炭素血症」になります。
動脈血中の酸素分圧が60mmHg以下になることを「呼吸不全」と定義しています。そして、この中で、二酸化炭素分圧の増加を伴わない場合(45mmHg以下)を「Ⅰ型呼吸不全」、二酸化炭素分圧の増加を伴う場合(45mmHg以上)を「Ⅱ型呼吸不全」と呼びます。
このような呼吸不全が1ヶ月以上続く状態を「慢性呼吸不全」と呼びます。
Point1:肺内のガス交換が上手くいかない状態(PaO2≦60mmHg)= 低酸素血症(呼吸不全)
Point2:呼吸不全かつ二酸化炭素が体内に溜まらない状態(PaCO2≦45mmHg)= Ⅰ型呼吸不全
Point3:呼吸不全かつ二酸化炭素が体内に溜まらない状態(PaCO2>45mmHg)= Ⅱ型呼吸不全
呼吸不全の症状は?
息切れ(呼吸困難)が主な症状です。
軽傷の場合は、坂道や階段での息切れ(労作時呼吸困難)を自覚します。
重症になると、身の回りのことをするだけで息切れを感じて、日常生活が困難になります。その他の症状はそれぞれの症状により変わってきます。
高二酸化炭素血症が進行すると頭痛や血圧上昇、羽ばたき振戦(フラッピング)、意識レベルの低下が見られますが、ゆっくりと病気が進行した場合には症状に乏しいこともあります。
デバイスの選択と進め方
Ⅰ型呼吸不全
通常、鼻腔カニューラで流量2~3L/minの酸素流量から開始し、PaO2≧60mmHg、SpO2≧90%を目標に酸素流量を調整していきます。酸素吸入後も、高二酸化炭素血症を認めない場合は、SpO2でモニタリングをします。酸素流量が5~7L/min以上を必要とする場合には、ベンチュリーマスク(酸素濃度が指定できる)を使用します。
酸素濃度が50%のベンチュリーマスクでもSpO2≧90%を得るのが困難な場合、リザーバー付き酸素マスクなどを使用します。これでも酸素化が難しい場合には、ハイフローセラピーや人工呼吸器の使用を考慮する必要があります。
鼻腔カニューラ ベンチュリーマスク リザーバー付酸素マスク
Ⅱ型呼吸不全
CO2ナルコーシス(高二酸化炭素血症により、意識障害などの中枢神経障害を来した状態)の予防のため、鼻腔カニューレで流量0.5~1L/minの酸素流量から開始し、PaO2≧60mmHg、SpO2≧90%を目標に酸素流量を調整していきます。この際、微量酸素流量計を用いて注意深く小刻みに流量を調整する必要があります。患者の二酸化炭素のモニタリングのために、頻回に動脈血ガス検査を実施する必要があります。低流量酸素投与で患者の酸素化の改善が認められない場合、やむを得ず高流量・高濃度酸素の投与が必要となります。その場合には換気補助法として人工呼吸器を移行できる体制が必要になります。
まとめ
今回は、酸素療法の基本(呼吸不全)について記載しました。次回は「第三章 急性期の酸素療法」について説明します。もし、酸素療法に興味がありましたら下記の製品情報、その他お役立ち情報へアクセスしてみてはいかがでしょうか。
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