ペースメーカーは微小な電位を感知しながら適切なペーシングをおこなうため、電磁的エネルギーを出力する機器からの影響を受けやすいです。電磁的エネルギーを出力する医療機器の例として、病院内では電気メス、ハイパーサーミア、MRIなどがあり、ペースメーカー植込み患者さんに対してこれらは使用しないことをお勧めしています。しかし、外科手術などで電気メスを使用しなくてはならない場合は一時的に固定レート(非同期)モードに変更するなどの対応が必要となります。
使用をお勧めしない理由ですが、電気メスのメス先をペースメーカーの本体等に接触させながら通電すると、ペースメーカー本体の破損の原因となります。その他、ペースメーカー植込み患者さんに対して電気メスを使用した場合、ペースメーカーが電気メスの高周波を心電図波形と間違えて認識し、ペースメーカーが誤作動を起こす可能性があります。
また、ペースメーカーは自発心電図との競合を避けるため、自発心電図が検出された場合にペーシングを一時停止する「デマンド機構」を内蔵しています。メス先電極が接触するときに発生するパルス状の身体電位上昇によって、デマンド機構が作動し、ペーシングパルスの一時停止が起こることがあります。
最近のペースメーカーは外部からの電磁パルスによって、ペーシングパラメータやモードを変更できるプログラマブル型が多いですが、電気メスによってプログラムが変更されてしまう事故も報告されています。
ペースメーカー植込み患者さんに対して電気メスを使用する場合は、植込んでいるペースメーカーを取り扱っているメーカーにお問い合わせください。また、植込み型除細動器(ICD)についてもペースメーカーと同様のことが考えられますので、植込み型除細動器のメーカーにお問い合わせください。