気管切開患者を管理する上で吸引は大事な管理になります。今回は気管吸引について説明します。
気管吸引の目的
気道の開放性を維持・改善することにより、増大した呼吸仕事量(努力呼吸)や呼吸困難感を軽減すること、肺胞でのガス交換性を維持・改善することです。
要約すると、「安楽に換気ができるようにするため」に気管吸引を行います。しかし、気管吸引は患者にとって侵襲的で苦痛を伴う処置であることを忘れてはいけません。安全に最小限の侵襲で効率的に気管吸引を行えるよう、気管吸引の手技やリスクについて知っておくことが必要です。
気管吸引の頻度
気管吸引ガイドラインでは、気管吸引は定期的に行うよりも必要時のみに行うことが推奨されています。理由としては、気管吸引は生命維持に必須ではありますが、患者にとって苦痛を伴う侵襲的な手技であるため実施は必要最小限にとどめるべきであるからです。
気管吸引前のアセスメント
吸引前には気管吸引が必要であるかアセスメントを行います。
<フィジカルアセスメント>
・頻呼吸、呼吸補助筋を使用した努力性呼吸、陥没呼吸
・胸部、気管上の聴診にて副雑音を聴取する
・気道分泌物による咳嗽の誘発がみられる
・胸部の触診でガスの移動に伴った振動を感じる
・呼吸苦による頻脈、血圧上昇
<人工気道の観察によるアセスメント>
・チューブ内に視覚的に分泌物が確認できる
・人工気道の振動
<人工呼吸器/生体情報モニタによるアセスメント>
・気道抵抗値の増大
・フロー波形で見られる鋸歯状波形
・経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)や動脈血酸素分圧(PaO2)の低下
参考文献:気管吸引ガイドライン2023(改訂第3版)
まとめ
今回は、気管吸引について説明しました。気管吸引は必要な手技ではありますが、患者にとっては侵襲的で苦痛を伴う処置であることを忘れてはいけません。吸引を行う前はアセスメントを実施し、吸引が必要であるかどうかを判断します。次回は、副雑音について説明します。